OEM(受託製造)コラム
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OEMでサプリ・化粧品の商品企画を成功させる方法【FIRSTフレームワークを解説】

OEMを活用したサプリメントや化粧品の開発は、年々増加しています。
自社ブランドを低リスクで立ち上げられる手段として注目されていますが、現実には「思ったほど売れなかった」「在庫を抱えてしまった」といった失敗事例も少なくありません。
その理由は、処方や成分ばかりに注力してしまい、売るための企画検討が後回しになることにあります。
こうした失敗を避けるために、戦略ベースで商品作りを進めることが重要です。
そこでおすすめしたいのが、独自に考案したフレームワーク「FIRST」です。
これは机上の理論ではなく、OEM開発の現場で繰り返される流れを整理した実践的な手法です。
FIRSTを活用すれば、商品企画を抜け漏れなく整理できるだけでなく、「そもそも作るべき商品かどうか」を振り落とすフィルターとしても機能します。
この記事では、商品開発を検討している方に向けて、戦略的思考で製造へ進められるフレームワーク「FIRST」について解説します。
目次
FIRSTフレームワークとは?
FIRSTは次の5つの要素から成り立っています。
- F: Formulation(処方・成分設計)
- I: Identity(ブランドアイデンティティ)
- R: Relevance(市場適合性)
- S: Story(ブランドストーリー)
- T: Trust(信頼獲得)
OEM商品開発は「この成分で商品を作りたい」という発想からスタートすることが多いものです。
そこからブランドを形にし、市場との整合性を確認し、ストーリーや信頼を積み上げていきます。
このリアルな開発フローを整理した、汎用性の高いフレームワークが「FIRST」です。
各チェック項目に沿って、ヒット商品になるための条件が揃っているかを確認していきましょう。
F:Formulation(処方・成分設計)で商品の基盤を築く
OEM開発は「使いたい成分」や「実現したい効果」から始まります。
ただしアイデアを商品にするには、差別化・コスト・安全性・規制対応といった多角的な視点が欠かせません。
チェックリスト(Formulation)
- 主成分に科学的エビデンスはあるか?
- 競合商品との差別化ポイントは明確か?
- ターゲットが実際に摂取・使用できる形状/使用感になっているか?
- コストと販売価格のバランスは取れているか?
- 表現規制(薬機法・食品表示法)に抵触しないか?
point!
サプリメントや化粧品には、薬機法などの関連する法律がいくつかあります。
法律については、専門家に確認することをおすすめします。
成分選定にお悩みの方は SUNAO製薬 原料紹介ページ で、各成分やその効果を参考にして処方をご検討ください。
I:Identity(ブランドアイデンティティ)で独自性を創出
処方が固まったら、それを「どのようなブランド」として世に出すかを考えます。
ここが弱いと、せっかくの処方も他商品と差別化できず、埋もれてしまいます。
チェックリスト(Identity)
- ブランドの世界観に一貫性があるか?
- 商品名・デザイン・コンセプトがターゲット層に響くか?
- 既存ブランドや競合と混同されない独自性があるか?
- 消費者が「このブランドならでは」と言える理由があるか?
- ブランドのビジュアル表現がブレていないか?
point!
「○○といえばこの商品」と思わせる仕組みが重要です。
ブランド構築にお悩みの方は 売れるサプリ製造のための戦略についてのコラム をご参照ください。
R:Relevance(市場適合性)でニーズに応える
「作りたい」という思いだけで商品化しても、その商品を欲しい人がいなければ売れません。
市場データやSNSなどのレビューを通じて市場の声を確認し、「今必要とされる商品か」を検証しましょう。
チェックリスト(Relevance)
- ターゲット層の課題・ニーズを解決できるか?
- 競合商品と比べて優位性があるか?
- 市場成長の見込みがあるか?
- SNSやレビューで似た商品への需要が確認できるか?
- 過剰にニッチすぎて市場が小さすぎないか?
point!
客観的な情報を集めて、判断する必要があります。
市場規模データやレビューをリサーチしましょう。
市場適合性を活かした開発アイデアは コロナ禍の化粧品・コスメの動向とアフターコロナの動向予測の記事などSUNAO製薬のコラム記事をご参考ください。
S:Story(ブランドストーリー)で共感を呼ぶ
「なぜこの商品を作ったのか?」を語れることは、消費者の共感と購入動機につながります。
開発者の経験や顧客の声を背景にすれば、ストーリー性で競合商品と差別化でき、スペック以上の価値を持つ商品に育ちます。
チェックリスト(Story)
- 「なぜこの商品を作ったのか?」を語れるか?
- 開発者やブランドの体験・背景を物語化できるか?
- ターゲットが共感できるストーリーになっているか?
- 商品名やパッケージとストーリーが一貫しているか?
- 販売チャネルやPR施策でストーリーを活かせるか?
point!
意外に、自分たちにとっては当たり前と思っていることが、他の人にとっては特別なこともあります。
直接かかわっていない人に語ってみることで、気づかなかった魅力が見えてくることもあります。
実例はママの声から生まれた「まるごと鶏レバー」の紹介をご参照ください。
T:Trust(信頼獲得)で継続的な支持を得る
開発ストーリーや処方が良くても、信頼がなければリピートにはつながりません。
科学的根拠やレビューを示すことで、消費者は安心して選べるようになります。
チェックリスト(Trust)
- 第三者評価(専門家監修、臨床試験など)があるか?
- 実際のユーザーレビューやモニター結果を活用できるか?
- 口コミなどのお客様意見から継続的に改善し、信頼を積み重ねられる体制があるか?
- 開発者の顔や人柄が見える写真や情報があるか?
- 返品・問い合わせ対応など、運営面でも信頼を損なわない仕組みがあるか?
point!
きちんとお応えするという姿勢を持っていれば、信頼性は自然と出てきます。
製造・販売のヒントとしてAmazonの場合の運営に必要な準備について解説した記事もありますので、ご参照ください。
FIRSTを満たしている成功事例
ヒット商品には、FIRSTの各要素をバランスよく満たしているもの、あるいは特定の要素が突出して強みとなっているものが多く見られます。
ここでは、代表的な2つの成功事例をFIRSTの視点で分析します。
事例1:敏感肌向け化粧水(大手化粧品ブランドの敏感肌シリーズ)
概要
敏感肌向けに開発された低刺激性化粧水
- Formulation:セラミドや抗炎症成分を配合し低刺激処方を実現
- Identity:白基調のシンプルなデザインで“クリニック品質”を訴求
- Relevance:敏感肌市場は拡大傾向にあり、ニーズが増加
- Story:「肌が弱い方でも安心して使える化粧品を」というブランドコンセプト
- Trust:アレルギーテスト済みで安全性を裏付け
成果
敏感肌スキンケア市場で確固たる地位を築き、国内外でブランド認知を拡大。
成功軸
処方設計(F)+ ブランドアイデンティティ(I)
独自の考察
敏感肌の人のことを考えた処方設計で、クリーンさのあるパッケージや広告デザインの戦略が、ターゲットに刺さったことがヒットの要因だと思われます。
事例2:美白サプリメント(美容D2Cブランドの美白ケア商品)
概要
「飲む日焼け止め」として話題になった美白サプリメント
- Formulation:グルタチオン・ビタミンC・L-シスチンを配合
- Identity:透明感を想起させるネーミングとパッケージ
- Relevance:美白・UVケア市場の拡大期に投入され、市場ニーズに合致
- Story:「紫外線ダメージに悩む女性をサポートする」というメッセージ
- Trust:機能性表示食品として届出済み
成果
美白サプリ市場で定番ブランドとして認知され、メディアやSNSでも多数取り上げられた。
成功軸
処方設計(F)+ 市場適合性(R)
独自の考察
成長市場を的確に捉え、ターゲットニーズに合致した有効成分を配合した商品設計を行った結果、市場で高いシェアを獲得できたと考えます。
FIRSTを意識していない失敗例と対策
せっかく商品を作っても、思ったように売れないケースにはいくつかの共通点があります。
ここでは、FIRSTの視点から見たよくある失敗例と、その対策を解説します。
1.成分偏重でブランド性を欠く
流行成分だけで企画すると、独自性がなく埋もれます。
ストーリー性やブランド独自性がある要素をプラスしましょう。
ヒント≫ I:Identity(ブランドアイデンティティ)で独自性を創出
2.市場ニーズとのズレ
自分たちの思い込みだけで企画すると「誰も欲しがらない商品」になってしまいます。
各社がリサーチしたマーケティングレポートや競合商品の商品レビューなどを参考に、ニーズを探りましょう。
ヒント≫ R:Relevance(市場適合性)でニーズに応える
3.ストーリー不足で共感を得られない
スペックだけでは購入動機が弱いです。
開発背景や開発者の思いなど、共感を得られるストーリー部分を見せましょう。
ヒント≫ S:Story(ブランドストーリー)で共感を呼ぶ
4.信頼性の裏付け不足
エビデンスがなければ購入につながりにくいです。
すでに世間に信頼されている成分を用いたり、完成した商品でモニター試験を実施することで、消費者からの信頼につながります。
ヒント≫ T:Trust(信頼獲得)で継続的な支持を得る
失敗を防ぐには、FIRSTの各要素ごとにチェックリストで振り落としをかけることが重要です。
FIRSTで自社ブランドの未来は明るくなる
商品企画は「思いつき」や「流行成分」だけで進めてしまうと、発売後に売れずに在庫を抱えるリスクがあります。
しかしFIRSTを実践すれば、企画の段階でその落とし穴を避け、市場に受け入れられ、長く売れ続ける商品へと育てることができます。
- Formulation でエビデンスに基づいた処方を組めば、消費者に「効きそう」という期待を与えられる。
- Identity を明確にすれば、ブランドの世界観が一貫し、指名買いにつながる。
- Relevance を検証すれば、「作ったのに売れない」というリスクを回避できる。
- Story を持てば、ただの商品ではなく「共感で選ばれる存在」になる。
- Trust を積み上げれば、継続購入やファン化が進み、ブランドが長く愛される。
つまりFIRSTは、失敗を防ぐだけでなく、自社ブランドの未来像を描くツールでもあるのです。
FIRSTは「成功の設計図」であり「振り落としフィルター」
FIRSTフレームワークは、処方から始まるOEM開発のリアルな流れを整理したものです。
各ステップのチェックリストを活用することで、企画の抜け漏れを防ぐと同時に「作るべき商品かどうか」を判断できる基準になります。
ぜひ商品企画の段階でこのフレームワークを活用し、市場に選ばれる商品づくりにお役立てください。
次のステップへ
- 製造・販売の注意点が気になる人は →サプリメントや化粧品を販売する時の注意点。製造はOEMを活用して対応
- OEM委託の流れが気になる人は → サプリメントを工場に委託して製造してもらうメリットを紹介
- 成分選定や差別化が気になる人は → プレ/プロバイオティクス商品のOEM製造と差別化戦略(一例)
- 製造ロットや出来高が気になる人は → 製造における出来高(できだか)とは
FAQ:OEM商品開発を次に進めるために知っておきたいこと
- OEM製造を依頼するとき、最初に準備しておくべき情報は何ですか?
- ターゲット層、希望する効果・成分、想定販売価格、希望ロット、発売時期の目安を整理しておくとスムーズです。
- 成分は自分で決めないといけないのでしょうか?
- 必ずしも決め切る必要はありません。「こんな効果を持たせたい」「こういう人に届けたい」といった方向性があれば、OEMメーカーが処方を提案してくれます。
- 製造にかかる期間はどれくらいですか?
- 一般的には試作・検証・容器デザインを含めて4〜6か月程度です。新しい成分や特殊な容器を用いる場合は、さらに時間が必要になることもあります。
- 容器やパッケージデザインはどうやって決めればいいですか?
- OEMメーカーに依頼できるケースが多く、既製容器を使えばコストを抑えられます。オリジナル容器を作る場合は、金型費用やリードタイムがかかるため、企画段階で検討しておきましょう。
- 小ロットでも製造できますか?
- サプリ・化粧品ともに数千〜数万本(袋)単位が一般的ですが、小ロット対応可能なOEMメーカーもあります。販売計画やテストマーケティングに合わせて相談しましょう。
- 商品を作った後の販売・マーケティングは支援してもらえますか?
- OEMメーカーは基本的に製造までが役割ですが、原料のエビデンス資料や製品データを提供してくれる場合があります。販売計画は自社で立てつつ、OEMメーカーの持つ素材情報を活用しましょう。